読み終えた本 「イエス・キリストは実在したのか?」2014年10月13日

読み終えた本  「イエス・キリストは実在したのか?」
読み終えた本
「イエス・キリストは実在したのか?」
レザー アスラン (著), Reza Aslan (原著), 白須 英子 (翻訳)
出版社: 文藝春秋 (2014/7/10)

内容(「BOOK」データベースより)
「聖書」はもともと、イエスの死後布教に携わったイエスの使徒たちの手紙や文書を、ひとつに編んだもの。著者は、それぞれの弟子たちの文献、聖書以外の歴史的な史料を比較調査することにより、聖書で、何が捏造され、何が史実から落とされていったかを明らかにしていく。イエスとは実際にはどのような人物だったのか?そしてイエスは何を実際に説いていたのか?そしてそれがどのように変質して、世界宗教へと飛躍していったのか?「聖書」の物語と、実際の史実の差から見えてきたものとは?イスラム教徒による実証研究。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
アスラン,レザー
作家・宗教学者。1972年テヘラン生まれ。1979年イラン革命時に家族とともに米国に亡命。サンタ・クララ大学で宗教学を学んだあと、ハーヴァード大学神学大学院およびアイオワ大学創作学科小説部門で修士号取得。同大学でトルーマン・カポーティ基金小説部門の特別研究員およびイスラーム入門講座の講師を務めたあと、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校で宗教史の博士号を取得。現在、同大学リバーサイド校創作学科准教授

白須/英子
翻訳家。日本女子大学英文学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

●新約聖書は誰が書いたのか,ということは今まで少しは知っていたが,かなり詳細な制作年代が分かっていることに驚いた。
・Q資料(今は失われたイエスの言葉を箇条書きにしたであろう仮説上の文献)は,パウロの書簡と同年代に編纂された。
・マルコ伝はパウロの死後数年のうちに書かれた。
・マタイ伝とルカ伝は紀元90年~100年ごろ、ヨハネ伝は100年~120年ごろ書かれた。マルコ伝があまりに素っ気ないので,それを補完するように改訂したのがルカ伝,マタイ伝で,ヨハネ伝はそれらを時系列的に並べただけ。
・キリストという呼称はヨハネ伝になって登場する。キリストという言葉を最初に使ったのはパウロだった。ということは,ヨハネ伝はパウロの影響をもろに受けている。
・福音史家は無学であったため,歴史的な間違いだらけになっている。

ナザレはおそらく100戸ほどの寒村で,イエスも無学の職人だった。その弟子達も同様で,ギリシャ語,ラテン語はもとより,ガリラヤ地方の言語であるアラム語の読み書きすらできなかったろう。神殿での物売りや両替商を打ちのめしたのは,富を蓄える祭司階級への挑戦である。

ユダヤ総督ポンテオ・ピラトはイエスに同情などするはずのない冷酷な人で,また深夜に裁判が開かれるはずもなく(ユダヤ法に違反),ピラトが言った言葉は「お前がユダヤの王なのか?」だけである。

・ユダヤ人であるが,ギリシャ語に堪能なパウロ(サウロ)は紀元40年ごろ、エルサレムでペテロやヤコブと顔見知りになった。
・イエスには兄弟があり,弟のヤコブ、ほかにヨセフ、シモン、ユダの兄弟と、数人の姉妹がいた。
・イエスの父のヨセフはおそらくイエスが幼い時に死んだ。

イエスの死後,弟のヤコブが教団を率いており,パウロはペテロとは親しくしたが,ヤコブは,イエスに会ったこともなく,回心前はキリスト教の弾圧者であったパウロが独自の教義を広めていることに反対で,二人はエルサレムの神殿で大げんかをした。
パウロの死後,紀元73年には,ユダヤ戦役によりローマはエルサレムの神殿を完全に破壊し,住民は虐殺され,ユダヤ人はおそらく1000人ほどしか生き残らなかったという。

聖書の中のイエスはメシアであり,キリストであるが,実像としてのイエスはかなり過激な革命家であった。この本を予約している人が他に8人もいるので,慌てて読んだのだが,ここまで聖書が歴史的に詳細な研究がされていることに驚いた。