読み終えた本:「佃島ふたり書房」2012年06月15日

佃島ふたり書房
出久根達郎著
講談社(1992/10/30初版)
佃の渡しが消えた東京五輪の年、男は佃島の古書店「ふたり書房」を立ち去った―大逆事件の明治末から高度成長で大変貌をとげる昭和39年まで移ろいゆく東京の下町を背景に庶民の哀歓を描く感動長篇。生年月日がまったく同じ二人の少年が奉公先で知り合い、男の友情を育んでいく。第108回直木賞受賞作品。(Amazon.comの書評から)

もう文庫本も出ている古い本だが,以前から気になっていて,いつか読もうと思っていた。植物について書いた「漫筆菩多尼訶」のプロローグでも書いたが,
http://www.asahi-net.or.jp/~fv9h-ab/kamakura/botanical-essay1.html#Anchor253054
作者の出久根氏にお会いしていたかも知れない。出久根氏は昭和44年の生まれ。私よりも三歳年上で,中学校卒業後、集団就職で上京、月島の古本屋,文雅堂書店の店番をしていたという。たぶん,コンサイスの英英辞典を文雅堂で買ったとき,店の奥に丸い眼鏡を掛けた陰気な青年が居た。じろりと自分を見た時の,あの,人を見透かす様な視線が,今でも忘れられない。

久しぶりに「小説」を味わった。昨夜,1/3程読み残していたのだが,9時過ぎに寝てしまい,夜半過ぎに目が覚めてしまった。眠れないので,読み始めたら,結局2時間掛けて読み終えてしまった。読むのは遅い方だが,引き込まれてしまった。文章が実に巧みだ。

108回直木賞受賞時の選考概要を読んでみたら,
「小説に翻弄されるという醍醐味を久しぶりに味わった。」「文章で昂奮させられる作品、というのは、うれしいものだ。」「過去と現在のもつれかたに、えもいえぬ詩情がたちのぼる。」「最後のページを閉じたとき、実にあとあじよく、感慨が心を濡らすのに気付く。」という田辺聖子の書評が,自分の感想に非常に近いものだった。他の選考委員では黒岩重吾,山口瞳,井上ひさしが二重丸だった。

小説の中では,大逆事件を扱っていたが,刑死した菅野スガの描写が興味を引いた。どんな人だったのか,資料だけはネットから拾ったので,後からゆっくり読むことにしよう。

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