ミリオンダラー・ベイビー2005年06月02日

「ミリオンダラーベイビー」を観ました。語り部という役になる、もとボクサーでジムの雑役夫。この雑役夫を演じるモーガン・フリーマンが実に良い。黒沢映画の志村喬という風情。ボクサー役のヒラリー・スワンクは、ひたむきさ、一途さが見事。身体作りに3ヶ月かけたそうですが、見事な筋肉美を見せてくれます。
クリント・イーストウッド演ずるジムのオーナー、内面の苦悩を枯れた渋い演技で見せてくれます。ローハイドの頃から知ってはいますが、マカロニ・ウェスタンは観ませんでした。ダーティー・ハリーは少し観ています。あとはマジソン郡の橋ですかね。齢を重ね、こういう渋い役者になるんですねぇ。予想していた結末でしたが、心に残ります。手の込んだ「家族愛」を描いた、名作、といえるのではないでしょうか?音楽もイーストウッド。心にしみます。
#横浜・新高島の109シネマズで鑑賞。ネット予約も出来、音響も良い。新しいところはなかなか快適です。

モ・クシュラ2005年06月03日

ミリオンダラー・ベイビーを観ていて、こんなことが印象に残りました。

イーストウッド演じるボクシング・ジムのオーナーはアイリッシュらしくカトリックです。ゲール語の本を読み、イェーツの詩を愛するインテリであり、熱心に教会に通うのですが、いつもあきれられるような、冒涜とも思われる質問を神父にする。ちっとも信仰心が厚いとも思われない。それでも、寝る前にはベッドサイドで十字を切って娘のために祈る。しかし、娘とは疎遠で、いくら手紙を書いても、開封されずに返送された手紙が箱に幾つもある。そんな娘への痛恨の思いから、早くに愛する父を失い、母にも妹にもまるで愛されていない、一途なボクサー志願の女性に、最初は拒むものの、いつしか熱心にボクシングを教え、国内では連戦連勝、やがて英国での試合に臨むわけですが、この時、鮮やかなグリーン(アイルランドのカラーですね)のガウンを彼女に贈ります。その背中には「モ・クシュラ:Mo Cuishle」とゲール語で書かれています。その意味を彼女には最後の最後まで伝えません。それは「Love You, My Darling, My Blood」という意味なのですが、「愛する私の娘」という意味が込められていたのでしょう。

結末はとても悲しいのですが、もう一度、じっくり観てみたい映画のひとつになりました。

ザッツ・エンターテイメント2005年06月17日

BS2で三夜連続だったようですが、14日の2と15日の3を観ました。2では、フランク・シナトラとグレース・ケリーのツー・ショットは「上流社会」。観ていませんが、いつか観たいなぁ。グレースの気品は並ぶものがないほどです。スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘプバーンは9本共演していたのですね。二人の関係もよく分かりました。フレッド・アステア、ジーン・ケリーは二人とも素晴らしい芸達者ですが、アステアは激しいステップを踏んでも、頭の高さは不動、というのは、名人芸としか言いようがないですね。まるでモズやカワセミが揺れる枝に止まっている時の様でした。ダイナ・ショアは歌と名前しか知らなかったので、映像を観て感激。ドリス・デイの若い姿もよかった。

3で印象に残ったのは、名前は失念、黒人女優が差別に合っていたことを述べていました。本人の気持ちは察して余りあるものでしょうが、そういう事実をこの映画ではきちんと伝えていて、かつての差別への反省が込められているところは、好感が持てました。レッド・パージでチャプリンを米国から追いやったのもハリウッドですから。

「アニーよ銃をとれ」の主役は、本当はジュディー・ガーランドだったというのは知らなかったなぁ。TVの番組の方も懐かしく思い出します。
歌の代役というのは良く行われていたようで、「マイ・フェア・レイディー」のオードリーを思い出してしまいました。オードリーはしっかり歌を練習し、本番でもちゃんと歌っていたのに、本人に知らされずに吹き替えられていた、というのを聞いたときには、ほんとにがっかりしたものです。でも「ティファニーで朝食を」での「ムーン・リバー」は本人の声ですが、確かにあまり歌は上手ではありません。とはいえ、ファンとしては本人の声が聴きたいのです。

アステアの撮り直されたシーンを二つ並べて見せるところでは、完全にシンクロナイズしていて、アステアの天才ぶりが思い知らされ、思わず拍手してしまいました。もう、こういうスターは出ないでしょうね。

MGMの70周年記念で作られて映画だそうですが、MGMだけでもこんなにボリュームがあるのですから、二十世紀フォックスやパラマウント、コロンビア、ユニバーサルなどでも同様の企画をしたら、どんなことになっていたか。そういうのも観てみたいですね。

#この映画の中でも誰かが言っていましたが、映画の中に若い頃(あるいは生前の)の姿が永遠に残されているので、映画スターはほんとに幸せですね。