読み終えた本「人斬り以蔵異聞」2013年06月21日

人斬り以蔵異聞
読み終えた本「人斬り以蔵異聞」
仁井田 明 文芸社 2010年

新聞の書評で知ったのかも知れない。忘れてしまった。100頁あまりの短編。
岡田以蔵については,ずっと気になっていた。
「龍馬伝」では,武市半平太をかばって,最後まで口を割らなかったように描かれたが,調べてみると実際は弱虫で,武市にもバカにされるほどだった。女でも耐えた拷問にも泣きわめいたという。

なお,「人斬り」という呼び名は,後世の作という。司馬遼太郎の「人斬り以蔵」(まだ読んでいない)では,獄中の以蔵を,口封じのため武市が毒殺しようと計ったとあるが,計画はあったらしいが,武市等は押しとどめたらしい。

以蔵は腕を見込まれ,勝海舟やジョン万次郎の警護に当たったことは史実。

著者は教師を長く勤めた人のようで,土佐の出身。本書の以蔵像は,やや理想化されているようだ。土佐勤王党瓦解後,京都で捕らえられて,土佐に送られ,牢で拷問,自白を迫られる様子を書いている。史実にはない(と思われる)脱獄劇があり,再び捕らえられたという設定。

自白により同士を売ったため,維新後も顕彰される事がない。作者は歴史に翻弄され,未だに浮かばれないであろう以蔵に光を当てたかったのかもしれない。