読み終えた本「神は妄想である」 リチャード・ドーキンス2013年06月19日

「神は妄想である」
読み終えた本「神は妄想である」
リチャード・ドーキンス 早川書房

米国では進化論を信じている人は総人口の10%未満であるという調査があるそうだ。その米国が仕掛けたイラク戦争により,イスラムを敵に回してしまった。ブッシュのようなキリスト教原理主義者が大統領になる国,中絶医が原理主義者に射殺される国の,宗教や神の存在を疑う人に,ドーキンスは勇気を与えたかったからこの本を書いたのではないのか。

章立てとメモ。

第一章 すこぶる宗教的な不信心者
 私は人格神を想像しようとは思わない。世界の構造が私たちの不完全な五感で察知することを許してくれる範囲で,その前に立ち,畏怖の念に打たれるだけで十分だ。 アルバート・アインシュタイン
P11
米国では「イマジン」の歌詞「宗教もない」というところを削除して演奏することがある(らしい)

第二章 神がいるという仮説
 一つの時代の宗教は,次の時代の大衆文学である。 ラフル・ウォルド・エマーソン
P64
米国は建国の初期には,トリポリ条約(1797年)において,米国はキリスト教の上に築かれたた国家ではない,と明言していた。
P68
「キリスト教はこれまで人類に投げかけられたもっとも倒錯した体系である」(トーマス・ジェファーソン)
「灯台のほうが教会よりも役に立つ」(ベンジャミン・フランクリン)
「もし宗教さえなければ,この世界は,およそ考えられるあらゆる世界のなかで最善のものであったろう」(ジョン・アダムズ)
P73
ナポレオンがラプラスに対して,神に言及することなくこの本をどうして書き上げることができたかと不思議がったとき,ラプラスは「閣下,私はそのような仮説を必要としなかったのです」と述べたという。おそらく「天体力学概論」のことと思われる。

第三章 神の存在を指示する論証
 神学の教授が,われわれの憲法に占めるべき場所はない。 トマス・ジェファーソン
P158
バートランド・ラッセルは,もし彼が死んで気がついたら神の前に立っていて,ラッセルがなぜ神を信じなかったのか理由を知りたいと要求されたらどう答えるかという質問を受けた。ラッセルの答えは「証拠が充分でなかったのですよ,神様,充分な証拠がなかったからですよ」というものだった。

第四章 ほとんど確実に神が存在しない理由
 さまざまな宗派の聖職者たちは,・・・・科学の進歩を,魔女が陽の光の到来を怖れるように怖れ,自分たちの生業を成りたたせている詐術の一部を手放さなければならないことを告げる致命的な予兆に顔をしかめる。 トマス・ジェファーソン

第五章 宗教の起源
 時間・痛み・困窮というコストをともなうにもかかわらず,普遍的に見られる過剰な宗教的儀礼は,進化心理学者にとって,マンドリルの赤いお尻のように鮮やかに,宗教が適応的なものであることを示すものであるにちがいない。 マレク・コーン
P293
geneに対してmeme(ミーム)というものを提唱している。ミームとは人々の間で心から心へとコピーされる情報のことであり、習慣や技能、物語といった人から人へコピーされる情報で,「進化」することにより,文化を形成する。
P296
モルモン教(末日聖徒イエスキリスト教会)はまったくのでっち上げであると切り捨てている。
P298
カーゴ・カルトの説明にアーサー・C・クラークの第三法則「十分に進んだテクノロジーは魔法と区別がつかない」を引用し,ニュー・ヘブリデス島の「カーゴ・カルト」(今まで観たことのない船や飛行機の積荷を超自然的なものとする宗教)を紹介している。救世主の名をジョン・フラムと云い,いつかまた戻ってくると信じられている。

第六章 道徳の根源 ---なぜ私たちは善良なのか?
 奇妙なのは,ここ地球上における私たちの状況である。私たち一人一人は,わけも知らないまま,束の間のこの星に滞在するだけだが,ときには,目的を察知しているかのように思われる。けれども,日常生活の観点からすれば,私たちにわかっていることが一つだけある。すなわち,人間はほかの人々のためにここにいるということである。----とりわけ,その人たちの笑みと安寧に,私たち自身の幸福がかかっている人々のためにである。 アルバート・アインシュタイン
P330
「宗教は人間の尊厳に対する侮辱である。宗教があってもなくても,善いことをする善人はいるし,悪いことをする悪人もいるだろう。しかし,善人が悪事をなすことには宗教が必要である」(スティーヴン・ワインバーグ)

「人間は,宗教的な確信をもっておこなっているとき以上に,完璧かつ快活に悪をなすことはできない」(ブレーズ・パスカル)

第七章 「よい」聖書と移り変わる「道徳に関する時代精神(ツァイトガイスト)」
 政治は何千人も殺してきたが,宗教はその何十倍もの人間を殺してきた。 ショーン・オケーシー[1881-1964 アイルランドの劇作家]
P365
イエスははっきり「旧約聖書」と決別し,たとえば安息日の掟を破ることについての怖しい警告を諌めた。「安息日は人間のためにつくられたが,安息日のために人間がつくられたのではない」と。イエスは当時としては卓越した道徳観を持っていた。「人もし汝の右の頬を打たば,左おも向けよ」は,ガンジーやキング牧師を2000年先取りするものである。
P384
無神論者の新十戒
・自分がしてほしくないと思うことを他人に対してするな。
・あらゆる事柄において,人を傷付けないように務めよ。
・あなたの仲間である人類,あなたの仲間である生物,そして世界全般を,愛,親切,誠実および敬意をもって扱え。
・悪を見逃さず,正義を執行することにひるむな。しかし,進んで認め,正直に後悔しているならば,いつでも悪事を許す心構えをもて。
・喜びと驚きの感覚を持って人生を生きよ。
・つねに何か新しいことを学ぶように務めよ。
・あらゆる事柄を検証せよ。つねに,あなたの考えを事実に照らしてチェックし,どんな大切な信念でも,事実と合わなければ捨てる心構えを持て。
・けっして反対意見を検閲したり,耳を傾けることを拒絶したりしてはならない。つねに他人があなたに反対する権利を尊重せよ。
・あなた自身の理性と経験をもとにして独立した意見をつくれ。むやみに他人の意見に導かれることを許してはならない。
・あらゆることに疑問を発せよ。

これらに加えて,
・あなたの性生活を(ほかの誰にも危害を及ぼさないかぎり)楽しみ,他人が個人的に楽しむのを,それがいかなる性癖であろうと,ほうっておくこと。それはあなたに関係のないことだから。
・性別・人種・あるいは(可能な限り)生物の種のちがいをもとにして,差別や抑圧をしない。
・子供を教化しない。子供には自分で考える方法,証拠を評価する方法,あなたに異議を唱える方法を教えよ。
・未来を自分の持つ時間のスケールよりも大きなスケールで評価せよ。

第八章 宗教のどこが悪いのか?なぜそんなに敵愾心を燃やすのか?
 宗教は実際に,毎日毎秒あなたのするすべてのことを観察している目に見えない--天空で暮らしている--人間が存在すると人々に信じ込ませてきた。そして,その目に見えない人間は,あなたにしてほしくない10の事柄の特別のリストをもっている。そしてあなたがその10のうちのどれかをおこなえば,彼は火や煙,灼熱,拷問,苦悩などに満ちあふれた特別の部屋をもっていて,あなたをそこへ生きたまま送り込み,時の終わりがくるまで永久に苦しめ,焼き焦がし,息を詰まらせ,泣き叫ばせる・・・だが,彼はあなたを愛しているのだ! ジョージ・カーリン[グラミー賞を受賞した米国のコメディアン]
P423
チューリングは同性愛が犯罪であると有罪(1954年)になり,自殺した。ドイツのエニグマ暗号の解読に貢献したにも関わらず。

第九章 子供の虐待と,宗教からの逃走
 どの村にも,灯りをともす教師と,灯りを消していく聖職者がいる。 ヴィクトル・ユーゴー

第十章 大いに必要とされる断絶(ギャップ)?
 100インチ望遠鏡を通してはるか彼方の銀河をのぞきこむ。一億年前の化石や50万年前の石器を手にもつ。グランドキャニオンのはてしない空間と時間の深淵の前に佇む。あるいは宇宙創造の様相をじっと凝視して瞬きもしない科学者の言葉に耳を傾ける。そういうこと以上に,魂を揺さぶることができるものが何かあるだろうか? これこそ深く聖なる科学なのだ。 マイケル・シャーマー

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://luke.asablo.jp/blog/2013/06/19/6870924/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。