読み直した本2012年03月30日

イシ
「イシ」 北米最期の野生インディアン
シオドーラ・クローバー (著)
行方 昭夫 (訳) 岩波現代文庫

図書館で借り,既に読んでいたが,岩波から再び出たので買ったのだった。いつも手元に置いておきたい本の一つ。石器時代から1911年のアメリカに現れた最期の(野生)インディアンの話。イシは4年近くカリフォルニア大学サンフランシスコ校の博物館で過ごし,結核で亡くなった。イシを保護したアルフレッド・クローバー教授が亡くなったのち,イシには面識が無かったクローバー夫人が,残された資料をもとに著わした。イシの「親友」であった教授は生前,イシのことについて,語ることも本を書くことも無かったという。現在,バークリー校内にIshi courtがある。

心に残った一節
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・・・・イシは自分からすすんで白人の世界の「便利さ」と多様性を高く買っていた。イシにしても、あるいは苦しい欠乏生活を送ったことのある者なら、そのような困難を緩和するようなものや快適な、さらに贅沢な生活を保障するようなものを低く見ることはできない。彼は白人を幸運で、創造性に富み、とても頭がよいと考えた。しかし望ましい謙虚さと、自然の真の理解ー自然の神秘的な顔、恐ろしさと慈悲の入り交じった力の把握において幼稚で欠けるところがあると見ていた。  クローバー(教授)は今の時点で振り返ってみて、イシをどう思っているかと聞かれ「私の知ったもっとも忍耐心のある男です。忍耐の哲学を完全に身につけ、しかも、彼の快活な忍耐心の純粋さをくもらせる自己憐憫とか苦渋の跡が全然見られなかった」と述べている。彼の友人たちはみな快活さをイシの性格の基本的な特徴と考えているようで、この快活さはその機会が与えられると、おだやかなはしゃぎにもなりうるものであった。彼の生き方は安心立命の道、中庸の道であって、少し働き、少し遊び、親しい友に囲まれて静かに歩んで行くという風であった。・・・
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私もこのような人生を歩んで行きたいと思う。

本は以下のように結ばれている。
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・・・それから彼は、古代ヤナ族の故郷からミル川、ディア川に沿うてヤナ族の死者の国に至る長旅を終えてこの世から姿を消した。彼の友人とその世界への告別は彼の好んだ別れの挨拶と同じく物静かなものであったー

  「あなたは居なさい、ぼくは行く。」